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あひのん日和!【第7話】あひるのお手々つないで!のーとくん!大作戦

◇ATTENTION◇

この話は、花園家で繰り広げられるあひるとののんの日常です。

うp主は一次創作者ですが、あくまで「花園家のあひのん」としてご覧ください。




*****



 これは冬のある日の続きのお話。


 ののんちゃんは通常運転だったので、次の標的はのーとくんにすることにした。のーとくんはああ見えて天然タラシだからきっと乙女ゲーム的な展開にしてくれると信じて、作戦Aを実行する! 尚、これはあひるのただの暇潰しである。

 取り敢えず適当な理由を付けてのーとくんを外に呼び出した。……ところまでは良かった。


「おまたせぇ~いやぁ寒いねぇ、途中迷子になっちゃって街で遭難するかと思ったよ。シャバに出るのは命懸けですな」


 こんな感じの→( ´ω` )/ 女子っぽい顔文字が付いていそうなふわふわした様子で現れた彼は「何それアザラシの毛皮?」と突っ込む人が10人に1人は居そうな謎の生地で繕われた重そうなコートに、スキー場に直行出来るであろう重装備を身に着けていた。


「違うなぁ……何もかもが」

「え? ナニモカモガ? あひるっち鴨にも精通してるのかい?」

「日本語通じないしなぁ……」

「えっえ? 何? ごめんね?」

「いや、別にいいんですよ?予想の範囲内だしね? だが然し、のんちゃんだったら「分からないのに謝らないでください」と言うね! 確実に!」

「何で2人は俺に厳しいのかな。ボク泣いちゃう」

「泣け泣け」

「おーいおいおいおい(棒)」

「ほら、いい加減歩くよ」

「ねー寒いカフェー寄ろうよカフェー」

「あーはいはいのーとくんの奢りねー」

「うん」


 年下の女の子に、顔にモコモコの手袋を当ててあざとくお願いをする19歳の男ってどうなんだろうな。そんなことを思いつつ、奢りなのでその提案を受け入れる。



*****



「ブラックコーヒーを」

「……あ、抹茶ラテ1つ」

 店員さんが注文を確認する声が頭に入らないくらい気になることがあった。


「……何見てんの? えってぃー!」

「あ、ああ……ごめんごめん」


 それは目の前にいる人が着ているTシャツのデザインである。ざっくり言うならば、黒地に不味そうなカラーリングをしたパフェが全面に大きく印刷されている。


「そのTシャツ何処で買ったの……?」

「え? なんか着心地良くて。何処だっけなこれ、覚えてない」


 着心地なんて訊いていないのだが。


「パッ〇マンも良いなと思ったんだけど子供っぽいかなと思って」

「あれお前のか!」

「ええ!? 僕です!」


 ずっと気になっていたTシャツの持ち主が思わぬところで判明した。正直ハイセンスというか着る人によってはダサいと一喝してもいいような微妙なラインのデザインで、なんとなくのんちゃんかなーと思って訊いてみたが「美少女が着たら超可愛い」と謎の言葉を残して

作業に戻って行ったのだった。残念! のーとくんでした!


「モデルさんがゆるく着たら可愛いかもなぁー、実際にありそうだし。うん、アリです」

「え? 何?」

「いや、イイ趣味してるネ」

「えっ有難う!」

「褒めてはないんだよなぁ」

「褒めてないの!? えー駄目? 可愛くない? このドット絵な感じ!」

「のんちゃんには好評価だったよ。(美少女に限る)」

「やった! だよねぇー分かっていらっしゃる!」

「前はさー薄桃色のシャツに洒落てるセーターとか着てて結構良い感じだったのに急にどうした?」

「いや、何か置いてあったから……ののんさんからのプレゼントだと思う。メッセージカード入ってたから」

「何それ怖い。なんて?」

「えっと「可愛い服見つけた」って。キモい兎のイラスト付きだったから多分ののんさん」

「お気に入りだよねあの絵。キモいというか謎の欧米感ある。可愛い」

「女子の好み分からないよ」

「おまいう」

「ええ! それよりさピンクのシャツってどうなの。ちょっと抵抗あったんだけど」

「どうしてパッ〇マンには抵抗がなかったのか。んーのーとくん(見た目は)爽やかだし、

肌白いし血色良くなっていいんじゃない? まぁ似合ってたよ! セーターもボタンにこだわりあって可愛かったし!」

「そっか。良かった」

「後はモサい髪型かなぁー」

「やっぱり伸びたかなぁー切りに行くの面倒でさ。はー」

「無難に短くすればいいよ。変な髪型は一番やっちゃいけないよ。洒落てる髪型なんて宝くじみたいなものだよ」

「お、おう……気を付けます」

「さて、無駄話もそこそこに出ますかね」

「ん? そうかい、俺は結構楽しかったんだけどな。付き合ってくれて有難う御座います」

「お、おす!」


 こういうところに人柄が現れている気がして、良い人だなぁと思う。別に悪いことは何もしてないのだが、一応、人のことを考えてくれているんだな程度には好感度が上がった。あと楽しかったの一言が大きい。不覚にもドキッとしてしまった。



*****



「んー外は寒いなぁ」

「そうだね」


 肌を刺す感覚に本来の目的を思い出す。


(すっかり忘れてた)


丁度手も温まったし、忘れないうちに実行しよう。


ぎゅ。


「え……」


 歩き出す流れで手を繋いでみる。今の時間は暇潰し以外の意味は無いのだが、ただ手を取るだけも申し訳ないので、巻き寿司を作るみたいなノリでふんわりと握った。寿司食べたいなぁ。今日の夕飯は手巻き寿司パーティにしよう。

 あひるが夕食を決め帰りにスーパーに寄ろうと計画を立てているその一方で、美少女にいきなり手を握られたのーと本人は


「……?」


 この事態をいまいち飲み込めないまま歩いていた。


「帰りにスーパー寄っていいかな? 手巻き寿司やろう!」

「え? ああ、いいですねー! 牛肉も希望」

「えー邪道だなぁー! じゃあ牛肉とイクラと、卵ーはあるから、鮪と……」

「ツナ。トゥーナ。トゥナイト」

「さっきからお子ちゃまか!」

「いいじゃん安上がりで!」

「本当に安上がりな舌ね! 分かったよ! あ、キュウリ。あとなんだろう」

「……はい、手袋」

「へ?」


 突然の手袋に顔を思わず凝視してしまったが、目線を下げると、のーとが手袋を渡そうとしていた。


「なんで?」

「あ、いや……寒いのかなぁと思ったんだけど……違ったかな」

「……あ」


 手を繋いでいたことを忘れていた。


「……えっと、どうしよっかなぁー?」

「!」


 よく見たら握り返してくれていたので、強めに握って意思表示をする。ここで終わりにはしないぜ、覚悟しろのーとくん!


「あ、えと……あひる、さん……」

「何?」

「その、俺、手汗とか大丈夫かな」

「うん」

「そ、う。ですか……」


 チラッと反応を確認。ターゲットの音暖のーとは太めの眉毛を八の字に下げ、心做しか目を潤ませて酷く困った顔をしている。喩えるならば、大型犬が飼い主に待てと命令され、そのまま放置されたような顔である。


「ふふ」

「たっ楽しんでますね!?」

「だって面白いんだもん! 女の子と手を繋ぐのってどお?」

「うーん……手袋が恋しい……」

「酷くない?」

「だって、風が……」

「じゃあこれならどうよ」


 左ポケットに握った手を突っ込む。


「あー暖かい。歩きにくいけど」

「我慢せい」

「はぁーい」

「……いいのそれで?」

「んー? いいんじゃない?」


(なんか、基本的に受け身だなこの人……)


 何だかつまらないので虐めてみる。


「何かないの? 手を繋いでくれたあひる様に感謝の言葉は」

「え……有難う御座います」

「具体的に」

「えぇ……そうだなぁ。こんな冴えない男の人生で、あひるっちみたいな可愛い女の子と手を繋ぐことがどんなに有難い事なのでしょうか……と思いました」

「ふぅーん。面白くないなぁ」

「面白さを求められているのかい? うーん……参ったなぁ」

「あ、じゃあ俺様系男子で手を繋いでみて!」


 無茶振りをして、一旦手を離す。


「えぇ……? えーと、うーん……」


 また困った顔。でも考えてくれる辺りやっぱり良い人だ。


「……」

「ちょっと、無言で繋ぐのナシ」

「俺が繋ぎたいんだ、何か問題が」

「……40点」

「頑張ったのにー!」

「だってただのぶっきらぼうな人だもん」

「難しいなぁ……乙女心って」

「あはは、でも人柄は出てるよ。ちょっと可愛かった」

「そう? なら良かった。ところでどこに向かってるの?」

「スーパー」

「え? だって用事があるって……」

「もう終わった」

「いつの間に!?」

「さ、荷物持ち頼んだぞ!」

「あ、それは勿論です。重いもんね食べ物って、いつも有難う」

「もっと感謝するが良いぞ?」

「うん、いつも温かくて美味しいご飯を有難う御座います。大好きです」

「でっしょ?」

「うん。好き」

「あ、あの……もうイイよ」

「そういうところも好きだよ」

「顔が熱くなってきた……」

「可愛いなぁー」

「思ってないでしょー!」

「いや、女の子らしくて良いなぁと思って。嫌だったかな、ごめんね」

「だ、だから急に真面目にならないでよ!」

「えっごめんね! えーとえーと、どうしよう。俺、思ったことすぐ口に出ちゃうから、えっと……でも可愛いよ、あひるっちは凄く。魅力的な女性だと思う。だから、うーん?なんだ……言葉が浮かばない……」

「も、もういいって! ほら、スーパー着いたから!」

「あ、じゃあ缶詰め見てくるよ! おっすし♪ おっすし♪」

「……はぁーなんかどっと疲れたなぁ……」


 マイペースなのーとくんに振り回されるあひるでした。ちゃんちゃん!


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