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あひのん日和!【第9話】春。そして出会い

◇ATTENTION◇

この話は、花園家で繰り広げられるあひるとののんの日常です。

うp主は一次創作者ですが、あくまで「花園家のあひのん」としてご覧ください。




*****



 柔らかい少し癖のあるブルネット。左耳にキラリと光る僕とお揃いのピアス。影のように佇むスラッとしたシルエット。

 彼はいったい何者なのだろうか。思考停止に近い感情を抱いた。しかし、本当は分かっていた。僕は彼を知っている。


「……のーときゅん?」

「はい?」

「え? 本当にのーとくん? うそーん」

「はぁい皆大好きのーとくんだよ。act2になりました!」



<第9話!春。そして出会い>



「えぇ~~~待って待って? 嘘?」

「エイプリルフールじゃないんだから」

「え? エイプリルフール? なーんだ!」

「(あ、ダメだこいつ)」


 この無駄に喧しい高身長黒髪筋肉眼鏡は響姫ひるや。ビジュアルが解禁されてから早2年。正式デビューに至らず、事実上のニートをしている。


「ついこの間、私ものーとくんに合わせて新衣装をデザインしてもらったばかりなのに……?」

「文句は花園さんに言ってよぉ」

「いやいや! どっちも素敵だよ~!」


 いきなり溜息を吐くこの少女は音暖ののん。大人びている割に根は年相応である。そして横のキラキラした少女は響姫あひる。ののんと仲が良い。本人曰く「ともだち……いやライバル! いやでも、んー相棒だ!」らしい。


「それにしてものーとくん、いや19歳? え? どんどん恰好良くなって………しんどい……」

「袖がモフモフのコート……流行りに堕ちたか」

「有難うあひるん。ののんさんは主さんにそれ言ってね」

「……う~~~~~~ん」


 凝視。その二文字が背景に見える程の凝視。黒のコートが焼ける錯覚にのーとは口を開く。


「ひるや、見過ぎ」

「いやだって……僕まだデビューすらしてないのに君は! 置いていくなバカ!」

「んなこと言われてもなぁ」

「大丈夫ですよ。私だっては衣装だけ貰って3つ待機ですよ。3つもです。安心してください。私達のマスターはそういう方々です。誰もひるやくんを置いて行ったりなんてしないよ……!」

「の、ののん先輩ーーーー!!」

「ひるやーーーーーーーん!!」


 この2人は意外と仲が良いように見えるが全てはののんの気まぐれに左右される。今日はひるやの方が絡まれているが、普段はひるやから絡みに行って、ののんに煙たがれるのがテンプレになっている。


「あーでも、私も花園さんに衣装だけ貰ってタンスに眠ってるなぁ。録音はしたんだけど、

その後はうちのマスターに任されてるから」

「ぐあっぐー! 僕のこと忘れてないかー!」

「こら! 呼び捨てしない!」

「いやでもさ、ひるやんも衣装だけ貰ってる状態なのでは」

「結構前に録音したもん! それに埜々香ちゃんにボイトレしてもらったしぃ! あたためてるだけだから」

「あたためが長いなー冷凍されてるのかなー?」

「解凍してくれー! 誰かー!」


 そんなこんなで前の更新から期間が空いてしまったので、4月から新たにスタートです。



*****



「そして急に自己紹介タイムです」

「マジで急じゃん、どうした?」

「この3年間の間に新人が増えましたので、まとめて紹介します」

「新人の扱いが雑すぎるよ!」

「仕方ないでしょう! じゃあ一番手どうぞ!」


 この家の主人でありマスターの花園が皆に紹介の場を設ける。

 あひるは多数の知らない顔に興味津々といったように目をキョロキョロさせていた。


「初めましてーっ! はな丸だよ! よろしくねっ! あっこっちは弟の太郎だよ! 無愛想だけどすっごく優しくてお節介でいい子なんだよ? ねー!」

「はな太郎だ。以後よろしく」

「もー!本当は皆に会えるの楽しみにしてたのに~その態度じゃ誤解されちゃうよ?」

「はな丸はもう少し落ち着いてくれ」


 この明るい少女がはな丸。ハスキーのような犬の被り物をしている。一瞬獣人かと思った。そしてこの落ち着いている少年がはな太郎。年相応に見える黒髪短髪と小麦色に焼けた肌に黒の外套をヒラリと羽織っている。短パンから覗く白に、はな丸の異様な程に白い手足を思い出させる。やはり姉弟のようだ。

 ちなみに、はな丸のはなは鼻声のはなで、はな太郎のはなは花園のはならしい。


「はな丸太郎の2人は2階渡り廊下先の別棟にいます。はい、次ぃ!」


*****


「えと、乙芭……です。宜しくお願いします……」


 中性的な容姿から想像したよりも随分と可愛らしい声で放たれた不器用な言葉。ウェーブのかかった若草色の短髪にアメジストの瞳が印象的だ。コーディネートのセンスはメンズ寄りだが、下睫毛がふさふさしているところから性別は女性だろうと判断出来る。(作画的な意味で)


「全体的にちんまりしてますね。大歓迎です。ええ、大歓迎ですとも」


 今日まで、ののんはメンバーの中で一番背が低かったこともあり、自分より小さい子が3人も来たことに喜びが隠せない様子だ。その様子を周りが我が子を見守るように眺めている。

「そこに水を差すようで申し訳ないが……」とマスターは生温かい笑顔で最後の住民を呼ぶ。


*****


「はいっ初めまして、メアロイドです!」


 さらさらストレートのツインテールが黒と黄色のメッシュに揺れる。クールで大人びたな容姿をしているが声は可愛らしくハキハキとしている。高身長でスレンダーなシルエットは花園家では珍しい。ちなみに163cmだ。ひるやくんも高身長スレンダー(自称)で売っているがそれは筋肉ついてる割に細いねというだけであって決してスレンダーではない。


「で、この子は鼻歌を歌うことが出来る『鼻歌ちゃん』だ。君達のように決まった形を持たないので、今回は動くスピーカー(うさちゃん)から失礼する。」

『ふーんふふーん♪』

「この3人も別棟でシェアルーム中です。以上が今期の住民の皆様だ! 拍手ぅ~!」


 パチパチパチ


「はぁい天ぷらを揚げるような拍手を有難う御座います~。それでは今から雑談タイムです。散れ~!」


 北海道のバスガイドさんが言い放った天ぷら発言を10年経った今でもお気に入りのマスターであった。



*****



「はな丸ちゅあぁん……」

「おっほぉあひるっちぃ~あ"~そこそこぉ~きもぢいい~っ」


 あひるははな丸の謎に生き物のように柔らかい犬の被り物をもふもふと撫でまわした。実は以前、花園の誕生日会であひる達とミュージカルをしてお祝いした思い出があるはな丸はあひるとちょこっと仲良しだった。


「盟友よ」

「よし、ブラック〇ンダー同盟だな」


 それは、ののんとはな太郎も例外ではない。その一方で──


「……」

「……」


 誰1人面識の無いメアロイドと乙芭は沈黙が耳に痛かった。ただの歌唱ソフトである鼻歌ちゃんも会話には参加出来ないので沈黙を貫いている。

 そんな気まずい雰囲気に取り残された人物がもう1人いた。


「僕もまだ正式にデビューした訳じゃないのに謎の先輩感あるのよね。どの立場で行けばいい?」

「寧ろ真打です、みたいな顔で堂々と行けば? 初対面だし誤魔化せるだろ」

「今日から顔見知りですけどね~ん? 後でバレて嫌な顔されたら責任取ってよ?」

「そこは自己責任だろ。──乙芭くんに変なことするなよ」

「しねぇよ! 僕を何だと思ってるんだよ、結構硬派な男なのよ? ひるやくんって。てか何、女の子なの? 乙芭くんって花園さんは呼んでたけど」

「多分ね」

「ふーん。どうしよっかなぁ~💛」

「おい、そこの眼鏡。乙芭に色目使ったら殴るから」


 初対面の成人男性に物怖じすることなく、友人をかばうようにしてメアロイドは2人を睨み付ける。


「お? 君はメアロイドちゃんだよね? U(ウルトラ)S(スーパー)H(ハンサム)な貴公子の僕は名は響姫ひるy──」

「お前は?」

「音暖のーとです。宜しくお願いします」

「うんっよろしくね、のーと!」

「ん、僕だけ無視かな?」

「私、こういう男嫌いなんだよね。半径1M圏内には絶対に来ないで」

「え? そういう感じ???」

「ああ、ひるや完全に第一印象失敗してる……可哀想……」

「あ、あの……ごめんなさい。僕のせいで」

「乙芭くんのせいじゃないよ」

「元を辿ればのーとくんのせいじゃないかなぁ!?」

「急に大きい声出して怖いねぇあのお兄さん」

「おい!!!」


 おどおどと小さな声で謝る乙芭だったが、周りの喧騒に混ざって消えてしまった。癖の強いメンバーが多いこの家で乙芭が無事に生活出来るのか勝手に不安に思うのーとであった。


*****


 全員の顔合わせが終わったタイミングで、マスターが前に出て皆へ号令をかける。大体一緒に居るあひるやののんたちと比べて、別棟にいる彼女らとは交流する機会がこれきりになるかもしれない。そう思うとこれでお開きになってしまうのは名残惜しい気がした。それは向こうも同じだったようで、「また遊ぼうね!」とはな丸がぴょんぴょん跳ねながら次を提案してくれた。


「……と、まぁそんな感じですねぇ。新年度も明るく楽しく活動して参りましょう! あひのん、ばんざーい!」

「その宗教みたいなノリやめません?」

「あひのんはね、私の人生そのものなんだよ」

「重いよぉ……」

「あはは。これからもあひのんを一緒に盛り上げていきましょう!」

「「お~!!」」




*****


※2018年4月当時、あひのんメンバーは「音暖ののん」「音暖のーと」「響姫あひる」「響姫ひるや(正式デビュー前)」「はな丸」「はな太郎」「メアロイド」「乙芭」「鼻歌ちゃん」の計9音源。2021年、新規メンバーが増えたことを機に、はな丸、はな太郎、メアロイドの3音源はあひのん日和公式サイトでの配布を終了した。乙芭は「開発コード:乙芭」として残り、鼻歌ちゃんは「乙芭V2」と統合された。


参考:

【UTAU音源配布】アンチグラビティーズ【音暖のーと7音階VCV-act2-】 https://www.nicovideo.jp/watch/sm32967085

【UTAU音源配布】ナミダ電波【乙芭】https://www.nicovideo.jp/watch/sm32465668

【UTAU音源配布】おこちゃま戦争【はな丸・はな太郎】https://www.nicovideo.jp/watch/sm32267862

【UTAU音源配布】アンドロメダアンドロメダ【メアロイド】https://www.nicovideo.jp/watch/sm31835669

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